朝からがーっと打ち合わせて、がーっと稽古して、ごはん食べたらもう本番の時間だった。

展示する演劇『イト2014』14時/16時。

展示された、わたしがかつて着た衣装と鐘。

『イト2012』までのお話は、天才ゲーマーの光くん(高3)が電脳のプログラムであると知らずにチャットしたセカイちゃんに恋してしまうという物語。そのセカイ(及び妹のタタリ)は、光の友人・海月(みつき/クラゲ)の両親が開発したもので、それが原因で父が、ある組織によって還らぬ人となり、母は全世界の通信網を停止させる呪いを海月に託す……というような2038年が舞台の黙示録でした。

そのセカイちゃんがなんと、生まれ変わって生身だというのが今回の設定。
記憶の海に入ったことのある光と海月だけ前の記憶も持ったまま、何度も同じ場面を繰り返す。でも何度やり直しても、セカイちゃんとの別れがやってくる。
とても切ないお話でした。それでも最後に小さくても救いを提示するのがおにいのいいところ。それがファンタジーだとか甘いと言われたとしても、わたしはその希望を描くことを、その勇気を評価したい。たとえそれが誰かの見た夢だったとしても。


(撮影:Re;kaiさん)
今回はとにかく「記憶の海」の演出が秀逸。
天井に張り巡らされた糸と、床に散らばる紙片。この10周年のチラシをチラシと同じ赤黒のシュレッダーで裁断したもの。
お客様が持参した「処分したいけれど、思い入れがあって処分できない紙」も同じく裁断されてそこに交ざる。これは葬送。他人にとってはただの紙屑だけど、本人にとってはかつて意味のあったモノ。想像だけれど、持参されたものは手紙が多かったんじゃないかな。小さな紙片になった言葉たち。意味や感情。他者に他の紙片と同等のモノとして扱われることで、手放すことができたのじゃないかな。
そこからもう一度意味をもつもの=「光がセカイと会話するための言葉」として扱われるそれら。意味が取り直されるのが、まさに劇的だと思う。

わたし、おにい、大島さん、ソワレちゃんは初演・再演のイトと、同じシリーズの『PARADE』を経て今作に到る。
同じ台詞もある。当たり前だけど自分の現在の状況によって同じ台詞でも受け取り方が違うんだと改めて思った。うーん、逆算すれば、初演・再演のわたしは安定してて変化がなかった、ということかもしれない。なんか去年末から今年いろいろあったから(笑)、いままでも見えていて気にしてなかったことが美しく見えたり、心に刺さったり。生きてるっておもしろい。
「同じ台詞」を「同じ場面」を繰り返すシーンも『イト2014』にはあって、同じ台詞でも感情が違うというのはここにもリンクしている。このタイミングでやれてよかったなと思う。

この『イト2014』の告知をしたときに、わたしは
「あと何回眠ったら、君と手を繋げるだろう。」そんなお話です。
と書いた。
前世とか来世とか、もっと違うなにかであっても、一緒にいたかったその人ともう一度出会いなおすことが出来るなら、まずそれだけでひとつの幸運だと思う。
でもね、光はその人を探している記憶を持ったままというアドバンテージがあって、ちゃんと出会えて、セカイちゃんと会話できて、そしたらその記憶の傷みたいなものを治すことだってできるかもしれない(実際しようとして足掻くのがこのお話)。覚えていることで苦しみもするだろうけど。だって高校三年生だものね。
これは物語だから時空を超えている設定だけれど、実際の人生だってそうだと思う。
友達と喧嘩して、あんなに仲良かったのにもう会いたくないって疎遠になる。会わない=いない。他人になってしまえば、わたしの世界には存在しない(と思える)かもしれない。
だけどやり直すことはできる、お互いが生きている限りは。
去年末、わたしが大学生の頃からお世話になっていた人が急逝して、ご家族やご友人とお葬式で話して、そんなことを思った。
(この話は長くなりそうだから、また別で。)
喧嘩は、相手に思いがあるからするのだと思う。もう今後その人と一生会わないでいいと、死に別れても哀しくないならいいけれど、その喧嘩を思うと涙が出たり、口惜しかったりするならまた会って喧嘩すればいいと思う。先日、オラクルカードをやってもらったときに「まりちゃんも傷ついたかもしれないけど、その分、相手も傷ついたから、」って言われて、そうだよなあ、と思った。24歳くらいまでどちらかと言えば好戦的な人間(討論上等、売られた喧嘩は買う、的な)だったけど、今は滅多に喧嘩しないのにした喧嘩だった。けど、喧嘩になっても話すしかない時がある。(なんか今日は話が逸れるなあ。)
そんなことを、光と誰かの口論を見たりしつつ思った。
そんな『イト2014』でした。絆のお話でもあるからね。演劇は、祈りの一つの形だと思う。
わたしと糸道を繋いでしまったひとたちが、どうか、少しでも明るく歩けますように。
出演者紹介。


音楽班・fujimiya.tv(藤宮拓さん)と、Asohgiさん
藤宮社長とは(何度も書いてるけど)『イト』初演の2日目の公演でCuu-さんと一緒に即興劇伴してもらったのが生劇伴の最初(で、fujimiya.tvの生ライブも同じ日)。あの日から、今の「たくとまり」や「紅黒ちゃん」も始まっていると思うと、感慨深い。長いおつきあいになりました。今日は毛糸まみれだけど、また年末に!

Asohgiさんも『イト』初演の1日目の公演でCuu-さんと一緒に即興ノイズをしてくれた。そのご縁でAsohgiさんライブで飛び入りで踊らせてもらったんだった。Asohgiさんの鐘と(『PARADE』で忌が鳴らしていた)わたしの鐘は兄弟だった!京都と東京ではありますが、またきっと、どこかでご一緒するでしょう。楽しみにしています!たまにしか会わないのに、久々会った挨拶が必ずハグだしね(笑)


『イト』初参加陣にして初共演の5人。


愛犬さんこと相田健太さん(偉伝或)。控室で仮眠とってたのでツーショットならず!横顔が見えるのが愛犬さんです。殺陣が上手とのことで、独特の圧と陽の勢いを持った漢でした。


tAkさん(霞鳥幻樂団、ヘルサウナ、ほか)。こちらも独特の距離感とタイミングで、やわらかく近づいて来られる面白い人。演劇は初めてとはいえ、さすがライブをこなしているから舞台度胸は万全。楽しそうだった。霞鳥のマリさんとはZombieLolitaで共演しているんだけど、なんか言いはぐって終演後にやっと言いました。


WS突破の唯一の覇者、古屋佑磨さん。マスクメイドさんにメイクされて眉が男前…!
WSの最初から前から知ってたっけ?くらい馴染んでた。SAIと合ってる気がするから、またご一緒できるんじゃないかな。ナイス「やんす」でした!


綾瀬ぎんちゃん(Hermate、ヘルサウナ、ほか)とマスクメイドちゃん(厨讃帝国Der Heilige Ort、ヘルサウナ)。マスクメイド振付による『ナナホシ』、男前(美人の男装)なぎんちゃんの参加でわかりやすくSAIの見栄えを助けてもらった。忙しい時期で短い期間しか稽古できなかったのに、ばっちり役割を担ってくれた。


ここからは共演はしたけど『イト』出演は初めて組。
(なんだ!写真がない!)
あずやまさんこと、飯塚あずささん
声に迷いがないこの人は、安心して任せられるプレイヤー。
おにいとの付き合いも長いし、SAIの方向性をしっかり把握して、多くは語らないけど、表現でひっぱってくれる人。そして打ち上げ会場にも連れてってくれた。いろんな意味での頼れる先導役。
このごろ女っぷりがあがった。


みんごすこと、衣純(いずみ)ちゃん
彼女が高校生の時にわたしがA・P・B-Tokyo『青ひげ公の城』で第七の妻(ユディット)演じるのを見ている貴重な人。彼女も再三語ってるエピソードだけど、廻天百眼『鬼姫』再演の飲み会場で観劇後のお客様と演者としてばったり遭遇して声を掛けてもらい、会話の流れでわたしが「SAIはWSやってるし」って言ったことにより数年後のいま共演しているという、ご縁の人。怪我をしないおまじないしにいくと、まんまるの目をきらきらさせてる子。うむ、突き進め。

長くなったので、分けます。つづく!
御礼)舞台芸術創造機関SAI「展示する演劇- イト2014」(2/2)