思いがけずたくさんの方に見ていただき嬉しかったです。
一年前の『幻夢』の再構築版で、機材のセッティング方法もコツが見えてきて、ひとまわり、というにふさわしかった気がします。実加りん、歌鈴ちゃんに参加してもらってひとまわり。映像を使い始めてからもひとまわり。2周目突入で、あらたなゲスト、ぜんさんにも参加してもらえました。
最初の2015年の麻人楽『短歌零年』の時に、あるお客様が「こうやってこもださんがいろんな人と絡むのを見れたらいいな」と言ってくれたことが思い出されます。
そこから自分が好みの人を呼んで作品を作る幸せな巡り合わせのまま、第6回のここまで来ました。
FOXPILL CULT自主企画の幕開きの音楽劇という企画だったので、FOXPILL CULTのワンマンが決まったので「今回で少し麻人楽も空くかと思います」と事前にお話しました。
演劇のお客様からは、ありがたくも「劇場で上演してほしい」という感想をいただきました。
暗転ができなかったり(それはライブハウスのせいではなく、プロジェクターの問題ですが)、
スタンディングで全体が見づらかったり、企画上、音楽を最大限まであげたいので声とのバランスが難しかったり。
劇場でとなると形式を根本から見直さねばならない気がしますが、見に来てくれた音響の飯塚さんもアドバイスをくれたし、いつか、それも実現したい気持ちでいます。
(でもまずは、12月の昭和精吾事務所公演、そのまえに客演のManhattan69、こちらも応援していただければ幸いです。)


まずはお世話になった皆様のクレジット。

2016.8.26金 19:30-20:00 @東高円寺U.F.Oclub 
麻人楽音楽劇06『幻夢+』
脚本/演出:こもだまり(昭和精吾事務所)
音楽/映像:西邑卓哲(FOXPILL CULT)


▶︎出演
夢使い/姉:七瀬[ななせ]こもだまり
妹:河臨[かりん]稲川実加
男  =麻宮チヒロ
夢使い見習い:実咲[みさき]左右田歌鈴

鱗を持つもの:シン=ぜん(劇団アニマル王子)

言霊(声の出演):昭和精吾


===
[使用楽曲]
すべて 曲/西邑卓哲(FOXPILL CULT)・歌/麻邑楽(こもだまり×西邑卓哲)

琴の音(inst.)
おとづれ(inst.)※new
蕩揺 詞/こもだまり
ことどわたし 詞/こもだまり
 詞/こもだまり
モーニングムーン 詞/こもだまり


▶︎スタッフ

衣装製作(シン)/美粧監修:左右田歌鈴
本番オペレーション:倉垣吉宏(舞台芸術創造機関SAI)
本番撮影(映像):大内晋次

▶︎協力
劇団アニマル王子
舞台芸術創造機関SAI
FOXPILL CULT
昭和精吾事務所

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[本日の企画]
2016/8/26 fri.
FOXPILL CULT自主企画
ポトラッチデッドvol.22 -sapiens- @東高円寺U.F.O.CULB
w/蛸地蔵・CQ・FOXPILL CULT


このあとそれぞれの紹介を。
  


●男=麻宮チヒロさん。
 
『幻視』シリーズでは一貫して「誠実であろうとするが間違える男」を演じてもらっているチヒロさん。
今回、シンと男、どっち役か悩んだ。
『幻夢』で河臨が恋する男は『幻視』に於いては葉子のお父さんに当たるのではないか…と。
お父さんならぜんさんかなぁ、とも思ったし、既に書いてたシンのトリッキーな台詞がチヒロに合いそうでもあったし。
結果、男にトリッキーなシーンを追加するという措置で男役に決まってからも、(初演と違って)実体になったことで、去り際の台詞は最後まで悩んだ。チヒロにも相談し、一緒に悩んでもらった(ありがとう)。

そのうちアーキタイプという言葉に出会って(日比谷カタン氏に感謝、ひいては死神さんに感謝。)どちらも解決しました。「この台詞は『幻視』の世界のものだから今回は合わない気がして迷ってたけど、アーキタイプという言葉を知ってね、(中略)、だからこの台詞は、河臨に対してだけではなく、世界に向けて言ってください」と言ったら「わかりました」と言ってくれたのでした。
アーキタイプ/元型 wikipedia

全作品に関わってるからということもあるかもだが、どちらかというと本人の資質で、作品の空気を的確に掴んでくれる。おなじみとなってきた「言葉の楽譜」な重奏の語りのシーンでも、いい声だなと今回改めて感じた。「言葉の楽譜」の同志である高橋郁子さんのワークショップに参加したことで、語りについて少し体系的な言語で会話できるようになった。今後も楽しみな俳優。

『幻視』シリーズに比べると台詞の比重は少ないから、言葉でない部分で補填するのが難しい役回りだった。実加さんと対で動く箇所もいくつかあったので、質感を盗もうとしていた。いつもありがとう。


●鱗を持つもの:シン=ぜんさん(劇団アニマル王子)。


 
数年越しで、やっと舞台上で会話できた。しかしトリッキーな役を思いついてしまったから、普通の会話はあんまりできなかった(笑)!が、数少ない会話の中であれ、ぜんさんだから気持ちのやり取りはできた。それは視線や、ほんの少しの間や、声のトーンに表れる表情。ぜんさんは大袈裟なことをしない。だけど内側がきちんとあるから、抑えててもそれが仄かにだとしても、輪郭がはっきりしている。これまで共演して(稽古場で見ていて)そう感じていたが、やはりそうだった。休憩時間に作戦会議したのが楽しかった。わたしが全員とツーショットで絡む冒頭のイメージシーンでは、それぞれとの関係を言葉以外で表現することにしていて、ぜんさん演じるシンは「敵対する者のような、師匠のような」ってイメージで「ぜんさんとなら殺陣でしょう」って殺陣的な振り付けした。麻人楽の殺陣新鮮!ナイフの扱いについてもアイデアを出してくれて、殺陣指導…まさに師匠的な位置づけで助けてくれた。

声に関しては、本番前のご案内日誌にも書きましたが嬉しい誤算で、初回の読み合わせで、とても深い声が出る人だと判明したので、脚本の調整時にそっちに激振り。
序では昭和精吾の十八番、邪宗門くらま天狗を想起するような台詞を言ってもらいました。
「夢を操る夢使い、隘路(あいろ)の涯てに眠りし魚、けたたましき夜に、さあ、出てきてみろ!」

全編において慈愛と厳しさの籠った(「もののけ姫」のモロ役の美輪明宏氏ばりの)ビブラートでした。


本番の日に作ってきてくれた煮卵と山菜おにぎりも美味しかったです。
ありがとうございました。



●言霊(声の出演):昭和精吾
初演では常川博行氏と昭和さんの声を使わせていただいたのですが、今回同じ日に常川さんが朗読会ということもあり、常川さんの声は流さずにおいたので、声の出演としては昭和さんのみでした。
ほんとうに一言だけれど、やっぱりスピーカーから流れるときの音のノリが抜群でした(チヒロさんとぜんさんの声に紛れさせたのでわかりにくかったと思いますが)。

8/29に日誌に書いたので引用で。

8月26日に上演したわたし脚本演出の麻人楽『幻夢+』にも、昭和精吾の声を一言だけ使いました。夢占い師が雨の中で鏡聴(きょうちょう=辻占)するシーンで聞こえてくる言霊のひとつとして。

「借りたものを返してお前が糸を断ち切るのだ」
わたしの初のオリジナル作品『幻視』のために録音させてもらった台詞です。
「糸を断ち切る」という言葉は昭和精吾の十八番のひとつ『邪宗門』くらま天狗にも出てくるモチーフです。『李庚順』の「数珠つなぎの血縁を絶ちきってしまうまでは」も近いですね。
「糸を断ち切る」=縁を切るの意味に捉えるのが普通だと思います。
けれど麻人楽での一連の作品に於いての「糸を切る」とは、捻れてしまった糸を切る意味で使っていて、もう一度出会うための手段なのです。

作品を通して、演劇や舞台を通して、わたしたちは昭和精吾に出会い直すことを続けていくのだと思います。昭和精吾の生きている姿を見られなかった人たちもそうであるように、わたしは語り続けるつもりでいます。


本番の数日後が、昭和さんの一周忌でした。


●夢使い見習い:実咲[みさき]左右田歌鈴さん。
 

初めて麻人楽に参加してくれた作品にひとまわりしてきた歌鈴ちゃん。
再演にあたって前回の稽古読み合わせやら、映像やら見てみたら、この一年で大きく成長していました。頭がいいから演技はできて、発話ももともときれいだったけど、表現の幅が広がりました。わたしにはわかる(笑)。
今回特にわたし好みに進化したのは冒頭の「血」という激しい曲の中での長台詞のブレスをいれないところと、中盤の語りで囁き声から急に120%に上がるところなど。
麻人楽のどの回も語り部として物語の外側の視点を持たなければならない難役を、最年少にやらせるという…でも練習熱心で、いつも、前の稽古で言ったことをちゃんと消化してきた。
歌鈴は伸び盛りです!

そして前回に引き続き衣装製作と、美粧監修をしてくれた。相談相手がいるというのはなんとありがたいことか!
「わたしたちがチャイナだから中国の宮廷とか官吏的なシルエットがいいなあ」とか「髪にお花つけようと思うの、こんなイメージなんだけど」と言ったのを資料探して整えてくれて、当日は男性陣のメイクとわたしのヘアメイクもしてくれました。(実加りんだけぜんぶ自分でやりました。えらい)
そして、実咲自身の見た目も、ちょっと大人になりました。

●妹:河臨[かりん]稲川実加さん。
 
恋の為に命をおとす人魚。何度も生まれ変わって出会うのに失敗する。

別の作品について話していたら実加りんに「意外。まりたん本当は厳しいんだね。麻人楽では『いいね。いいですね』って感じでほとんど私たちにダメ出さないから、あんまり言わない人なのかと思ってた」と言われたからこう応えた。「本来好みはうるさいと思うよ。私好みに出来てるから言わないだけ」。
言わなくてもビシッと決めてくれる、信用できる女優。
演出してて自分が入るのが後回しになるわたしの形を決めるときにも、重要な手助けをしてくれた。
…。この人についてあんまり書くと、書きながらでも泣けるから、このくらいにしておく。


夢使い/姉:七瀬[ななせ]こもだまり



守るべき妹を守れなかった思いを抱えたまま、死ぬこともできない人魚。
双子って独特だなと思うんだけど、特にこの七瀬と河臨はもとはたぶん同一の魂で、それが理由があって分裂したので、河臨はわたしだし、わたしとの天秤に乗っているもうひとつでもある、そんな関係。
もう一方を救おうとして救われて、それを見届けてくれるシンや美咲がいて、もしかしたらそのおかげで未来に繋がる。

前世とか来世とか、信じる人も信じない人もいるだろうけど、
その言葉じゃなくても、縁てのは確実にあって、ちゃんと原因と結果として世界にも個々にも影響していくと思う。七瀬は河臨を救いたくてあがいて、そのために選択を迫られて、結末に繋がる。いくつかある選択肢のうちのひとつを選ぶことが、選び続けて決めていくことが、生きていくってことなのだと思う。

あれ?なんか話が違う方向に。もとい。

続き。
音楽/映像:西邑卓哲さん(FOXPILL CULT)
(with観客席にいた石井飛鳥さん)
今回も「ここは悪夢で、サロメだから生首」とか「ぜんさんが龍体になって空に飛び去る」とか「巨大な龍で、双子が守られてるイメージ」とか壮大かつ突拍子もなく感じたであろう要望を、なんとか形にしてくれた頼もしき相棒。6作目ともなると、お互いの言語が共有できて話が早い部分があり、蓄積って財産だなと感じた。それは他のメンバーに関してもそう感じた。
麻人楽最初の『短歌零年 改-ことりおに-』のトラックからそうだったし(麻邑楽を初めてすぐ『Dead Man』のサントラの話ができたことからもわかるとおり)効果音とか環境音とかを音楽として扱える人。ゆえに、映像打ち合わせで(音地図と呼んでいる)通し録音を聞きながら「ここにスパイスの音入れたくて、イメージは◯の音なんですけどいいのがなくて」というと「じゃあ作りましょう!」ってすぐ作ってくれたりもした。具体的に言わなくても脚本と照らし合わせて勝手に「こういうの入れたらいいんじゃないですか?」て作ってくれたのもあった。魔法みたいだと思った(笑)。ありがとうございます。


●衣装製作(シン)/美粧監修:左右田歌鈴さん
作りおろし衣装第二弾…!シンは河伯ってイメージを伝えたらデザインから布の選択から仮縫い、しっかり工程を経て作ってくれた。そして先にも書いたけど男性陣のメイク監修とわたしのヘアメイク(わたしが予約リスト書いている間に髪をまとめてくれた)!麻人楽のビジュアル番長!ありがとう。

●本番オペレーション:倉垣吉宏さん(舞台芸術創造機関SAI)
忙しくても助けてくれるおにい。いてくれるだけで安心です。自分の振られた役割以外にもいろいろ周りをみて助けてくれて、わたし主宰の現場ではわたしのお母さんのような存在。ありがとう。

●本番撮影(映像):大内晋次さん
あいかわらずの瞬発力で、突然でも迷いない切り取り方をしてくれる。
晋次さんて普段、世界をどうやってみているんだろうって気になる。
皆を美しく撮ってくれるのが嬉しい。
西邑さんの映像も歌鈴ちゃんのメイクのおかげもあろうけれど、不細工なシーンとか場面がないから本当にありがたいのです。


そんな皆に支えられての、『幻視』シリーズひとまずひと段落でした。
またいつか!

2016.8記

 
初演の女三人の『幻夢』(2015.8上演)DVD-Rと、麻人楽音楽集03[夢]を今回発売。
『幻夢+』もきちんと撮影してもらえたので、そのうち販売したいです。

麻人楽 物販ページ☞  http://www.osk.3web.ne.jp/~nanten/matra/mt_goods.html

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