6月20日は砂々良の開店記念日。いったい誰が教えてくれたのだったろう。たぶんお客様とマスターの会話の中で出てきたのを、ユキちゃんか私が「ささらノート」にメモしたのだ。そう、ささらノートにはいろんな事が書いてある。わたしとユキちゃんの共有のノート。毎日ひとりずつしか入らないから、今日あったこと、引継事項、気付いたこと、などを書いておく交換日記のようなもの。その他に別冊ささらノートというのもあって、そこにはお客様の言ことで覚えておくこと(Kさんは貝類全般ダメ、とかFさんの煙草はマイセン8とか)が書かれている。なので、「あれっ、なんで昨日いなかったのに知ってるの?」とお客様に驚かれることもしばしば。便利で、大切なノート。お店に来たのは3月だけど、ノートは7月からで、もうそろそろ一年になる。今4冊目。レジ前に置いてあるからマスターはいつでも読めるのだけれど、そういう所硬派なので「俺は勝手に見ないよ」と頑なに手にも取らない。
その砂々良ノート内会議でユキちゃんとの間で秘密裏に計画された「砂々良開店記念のお祝い」は、マスターの意向も踏まえて、小さく、でもちゃんと祝おうという趣旨だった。
数年前まではお店から常連さんにご案内状を出して、日頃の感謝を込めてお祝いに来て下さったかたにはお返しに記念品など差し上げたり、盛大に祝ったという。でもこの何年かは(マスターも60歳を超えたということは)お客様の平均年齢も当然上がっていて、そうそう飲みに来られるかたも多くはなくなってきたのもあり、連絡して気を使わせてはいけないという配慮からご案内状も出していなかった。もちろん、ママの亡くなってからひと月しか経たない今年も。(だからマスターは「開店記念日っていったって、連絡してないし、新しいお客さんは知らないはずだし、普段通りだよ」と言っていた)
私達で買ってきたお酒を一杯ずついらしたお客様に振舞うのはどう?とユキちゃんが言った。大袈裟過ぎず、でもお店のお誕生日をお祝いしてる感じがちゃんとする。ユキちゃんナイスアイデア!

月曜日は私は本来ダンスの稽古なので顔を出さない日なのだが、この日は最初からお稽古を休むと言ってあった。急いだけどバタバタして、5畤に会社を出て帰宅し、身支度。悩んだけれど、お客様が大人のかたがたなのと、記念日だからということで、小紋の単衣を来て、電車で向う。髪は老けて見える完全アップではなく、サイドでお団子にして先を少し垂らした。
丸善ビルに着いて、鏡を見てから入ろうとトイレに向うと、さっちゃん(マスターの姪御さん)とばったり。「あら!まりちゃんも着物?示し合わせたの?」やっぱりユキちゃんも着物だったのね。予感的中。スバラシイ。(一応表向きはお客さんとして来た態で)「こんばんはー」と店に入ると「いらっしゃい!・・・お、まりちゃんまで着物で、どうした!」とマスター。「いや、たまたま」←そんなわけないけど、そう言う。お客様も「あれ?今日はふたりして着物って、何かあるの?」「いえ、ついでで」←なんのついでで着物で現れるというのだろう(笑)。「とりあえず暑いのでビールください」と言うとOさんがビールを御馳走してくれた。今日はカウンターが一杯だったそうで、普段はカウンター席のtさんとOさんがご相席で5卓に。そこに呼んでいただいて、空豆や、マスターの漬物などいっしょにいただく。
「まりちゃん来たらやろうと思って待ってたのー」とユキちゃん。早速、準備にかかる。マスターにワイングラスと、冷やしていたシャンパンを出してもらう。有無を言わさずみなさんにささっと配って、マスターと、ママの分も注いで、私達ももらって、知ってたかたも、知らなかったかたも、みんなで砂々良の誕生日に乾杯!

さっちゃんから、かおりちゃん(妹さん)もちょっと前までいたと聞く。かおりちゃんとも乾杯したかったな。ちょっと来るのが遅かった、ごめんなさい。

常連さんたちはお祝いを私達が企画したことを喜んでくれたし、着物にも喜んでくれた。
同じ場所で同じ立場で会っても、みなさん一段と紳士的なふるまい。やはり着物姿の女性には誰もがやさしくなってしまうものなのだろうか? 皆さまのところにぐるっとご挨拶に回ったあと、tさんとOさんのテーブルにユキちゃんと戻って、着物のこと、ママのこと、おふたりがお店に来始めた若い頃の懐かしい話などを聞いた。

そのあといらしたお客様にも随時お酌して一杯飲んでいただく。なんとお仕事の都合で何ヶ月かぶりにいらしたT社長、前々から「和服姿がお店で見られたらいいなあ」と言っていたので、偶然にしては出来過ぎのご来店。毎日のように来てくれているiさんは因りによって今日、徹夜覚悟の急な残業で来られないという連絡が(まめだなぁ)。せっかくささらガールズがW着物なのに!なんという運命のいたずらか。

シャンパン飲んでビール飲んでY会長から越之寒梅いただいて、なんてしていたらあっという間に酔っ払い。あっという間に23畤。ユキちゃんは帰ったがお客さまはまだいたので、私はなんとなく店員モードでお運びをする。残業のiさんより「今ケリつけたから12畤頃行く」という電話予告が来たので待つことにする。カウンターにiさんと私とマスター。最後の一杯(残っててよかった・・・)のシャンパンをiさんに差し上げて、今日最後のお祝いの乾杯。
間にあって(というか間に合わせてもらって)よかったですね。

食べるつもりで来たのに店員モードでうろうろしたからお腹が空いて、生牡蛎と平目の刺身を食べる(ほんとに砂々良のサカナは美味しい)。iさんからは焼酎のロックを一杯いただいた。相当なちゃんぽんかつ長時間の飲酒にかなり酔いが回っている気がする。駅まで着物で歩くのにはただでさえ時間がかかるのに酔っていては尚更。気持悪くはないけれど回っているので、タクシーに乗る宣言。1畤頃地上に上がって、iさんがタクシーを捕まえてくれる(やはり着物効果?)。iさんのお宅は私の帰る通り道なので途中まで乗っていかれるかと思えば、「それでは〜」と爽やかに手を振るiさん。乗っていけばいいのに、と思いつつ私も反応が鈍っているので、そのままドアが閉まり、お別れ。歩いて帰れる距離とはいえ、お疲れで酔って、無事に帰れただろうか?
すぐに携帯を置いてきたことに気付くが後の祭り。今日はバッグも小さいし、着崩れそうで帯にも入れなかったのが敗因。