昨晩のこと。
「明日もし雨だったら、私は洋装で行きます。」と、とき緒さんよりメール。
「雨だったら洋服で会いましょう」とわたし。
夕方の予報では明日は一時雨、でも深夜には全日曇りに変わっていた。 ついてるかも!

しかし、朝起きて今日の天気予報・実際の天気ともに曇りなのを確認するも、着替えようと思った11時すぎに外から雨音が。
慌ててとき緒さんに連絡すると、あちらは降っておらず、「わたしは着物着始めたところです」とのことなので、俄雨と判断して着物デート実施決定なのだ!
昨日コーディネイトを決めてまとめて置いてあったおかげで、着付け時間の最短記録をたたき出せたのではないか(時計見てなかったからわからないけれど)?
雨が降るかもしれないので、誕生日に千佳先生が「雨用の草履にしなさい」とくれた、ウレタンソールの草履をおろす。


神楽坂駅で待ち合わせ。ふたりともお昼は食べていなかったので、近所でフレンチのランチを食べる。
白髪のフランス人のマスターがワインをついでくれた時にとき緒さんが「Merci」と言い、ふたりは少し話をした。
「なんて?」「フランス語お上手ですね、と言ってくれたから、少しだけです、と答えたの」とのことだった。
フランス語は知ってる単語が少なすぎて、推測すらできない。
メインはふたりとも牛ほほ肉の赤ワイン煮。
平日だというのに店は、有閑奥様らで満員だった。


赤城神社でお参りして(姪ふたりが受験なので道真公にもよくお願いした)、cafeへ。
江戸切り子のグラスやランプシェードが色ガラスのランプが飾られている。肉厚な曇りガラスに桜の絵が描かれていたのが素敵だった。そういえばとき緒さんの桜の着物(水色に桜の花ひら)にちょっと似ている配色。
窓はクリスマスの装飾で、神社の敷地内という感じはしない。ここはコンサートも催される場所で、『裸のカフェ』というカフェ企画(戯曲でいうと『敗者にはなにもやるな』『裸のカフェ』『似ていない人』)をやるのにちょうどいいかも、というスペース(大きさも、雰囲気も音の聞こえかたも)。
着物の話や、近況、子供が産まれた友達の話をする。

061222とき緒とき緒さんは、ローズピンク地に植物が織り出してあるお召しに、ローズレッドの帯、帯飾りにバラのペンを挿している(本人知ってか知らずかの薔薇づくし!)それにお母様の赤い道行。フランス旅行に着た組み合わせを見せようと思って再現してくれたそうだ。いままで見た中で、この着物がとき緒さんに一番似合っている気がする、と言う。色みが柔らかいからかな。とき緒さんは目が強い系の美人で色白だから、暖色によって、ほわっとした印象が加わっていいのかも。
紺やグレーや水色も似合ってたけど、今日の着物に比べるとシャープな感じ。着物は全体を覆うワンピースだから、地色の支配力が強い。



今日は砂々良ママのウールの、「竹」と呼んでいる単衣(いわゆる竹模様ではないが、オリーブグリーンに老竹色=オリーブより少し薄い緑の縦線が手書き風に入っている色みが竹を思わせる)。
それに緋色の染め帯を合わせて、クリスマスカラーで。帯揚げと帯締めはひよこ色。羽織はハナさんの作ってくれた紺のウール、羽織紐は色の合うのがなかったので、ブレスレットで代用。(あ、ブレスレットと下着以外全てがいただきものだ!)

ふたりよりあとから来たお客さまたちすら帰ってしまったので、長居したな、と思って移動することに。
「フランスにも連れてってくれたようで、ご愛用ありがとうございます(笑)」
とき緒さんは今日も、今年の誕生日にプレゼントしたビーズ刺繍のシルクの手提げを使ってくれてた。

プレゼントって小さい頃は、嬉しいあまり、もったいないから使わない、ってしまっておいたんだけど、使ってもらう方があげた人は嬉しいんだってことに気付いてから、惜しみなく使うようになったの」と言うと、とき緒さんも「プレゼントもらった時、前は目の前で開けるのは失礼かなって思ってたけど、(あげる側になると)目の前ですぐ開けてくれたほうが嬉しいよね」と言う。
とき緒さんは私と会うときいつも、私がプレゼントしたハンカチやら小風呂敷やらを持ってくれてるのを、わたしは知っている。
わたしも今日は、とき緒さんがくれた和布の指輪と、帯飾りをしてきた。
ふふふ、とふたり。


日仏学院前の坂道で、つんのめって転びかけたブーツの女の子にとき緒さんが「大丈夫ですか」と小さく声をかけると「大丈夫です」と振り向いた彼女は続けて「なんで着物なんですか?!」と言う。
とき緒さん「・・・着物の会なんです(笑)」
女性「そんなのあるんですか・・・(とじろじろ見る)」
まり「いや、普段着です」
女性「わたしも着物すきなんですけど、着る場所がなくて・・・すぐなんで着物?って言われる(のが面倒な)ので」

・・・今思い返せば、そういうあなたもさっき第一声「なんで着物?」って言ったじゃないの(笑)
神楽坂は和装の人も土地柄少なくないので、ここで「なんで着物?」って言われるとは思わなかった。

日仏学院の図書館で借りたい本があるというのでつきあう。フランス語の絵本を手にとって見たが、わかる単語が皆無で(発音すらできかねる)ちんぷんかんぷんとはこういうことだなと思う。


そのあと、とき緒さんと静かなところで朗読企画の打ち合わせ&実験。
朗読していたら、(そんなに入り込んでいたつもりはなかったのだけど)思いがけず哀しくなって、声が震えた。
ふたりっきりのお話を、ふたりっきりの空間で読んでいたからかもしれない。世界とふたりが切り離されてる感覚・・・ふたりなのに孤独というか、いや独りではないから、なんていうんだろう? isolated かな。あ、solitudeのほうが近いかな。自分たちの意志で馴染まないのは、隔離では合ってない気がする。寂しいけれど、敢えてその場所にいることを選ぶ、ってことで、solitude が当てはまるがするけど、どうだろう?
その場所の気温が低めだったせいもあるけど、静謐で、きゅっと張りつめた空気はぬるくはなく、心地よかった。
ふたつの人格が、際立って、隣り合ってる。それでいて・・・決して混じり合わないものが、混じり合うような感覚、空気=Air。
とき緒さん、いろいろ準備してきてくれてありがとう。


来年は着付けの研究会をしようね、と約束して別れる。
とき緒さんは半幅帯に苦手意識があるようだし、私はお太鼓が緩みがちだし。
人の着付けする姿見たり、見てもらったりするのは貴重だ。
今日着しなの電車で気付いたこと。

「衣紋が抜けにくいのは、身体が薄いからではないか?」
厚みがないと、鎖骨〜肩〜首にかけてのラインの角度が急になるでしょ?
だからすべってきちゃうのかな、と。

「十分締めてるつもりのに帯の巻きが緩むのは、締める時に力むからではないか?」
お腹に力をいれて締めるから、抜いた時に緩むのでは? 締める時に息を吐いてみたらどうだろう?

とき緒さんに言ったら「あるかもね」とのことなので、このへんを詰めてみたい。
たのしみ。