『Bon Voyage!』打ち上げ砂々良開店記念日

2008年06月20日

美貴からみた『Bon Voyage!』(断片)

※わたし(役者・こもだまり)と美貴(役)からみた『Bon Voyage!』について、わたしのための記録として書きます。
飽くまでわたしの視点であって、脚本・演出家の意図とは違う部分があるかもしれないことをご理解ください。)



本番直前。
オープニングのため、美和姉さんとふたりで裏にスタンバイ。
姉さんは私に背を向けて立っているので、姉さんの肩越しに暗い舞台が見える。
回数を重ねるうちに、キッカケの曲がかかると条件反射的にお葬式の気持になるようになっていった。
父さん、母さん、と思ってるうちに泣きそうになるんだけど、まだ高校生の美子のことを考えると、わたしがしっかりしなきゃと、踏みとどまる。
M0(エムゼロ=本編の始まる前の暗転のキッカケ曲)が入ると、暗転板付きの為に姉さんと手を繋ぐ。
こちらを振り返らずに手をつないでいる姉さんを見ていて、子供の頃こうやって手を引いてくれたことを思い出して、小さい子供のような気持になって、また泣きそうになる。でもわたしが姉さんと美子を守るんだ、姉さんが母さんになるから、わたしは父さんの代わりをするんだ、と思い、泣くのをやめる。でも姉さんは、わたしが泣きそうなのも、きっとわかってて、知らない振りをしてるんだ。だから時々、手を強く握り返してくれてるんだよね。だからわたしも、姉さんに気付かれてない振りをする。


姉さんが「美子は?」と訊く。姉さんは美子を心配してる。本当はわたしもすごく心細いんだけど、「姉さんは、しなしゃいけないことがあるでしょ」と言う。姉さんを振り返ると、見たことないような不安そうな顔してる。もう強くあるしかないんだ。わたしたちは、泣いてる暇なんてないんだから。
そう言って出て行って、楽屋への階段を駆け下りながら、ほんとは涙がこぼれそうなんだ。
楽屋で姉さんと協力して早替え。ふたりしてお葬式の気分から一気に結婚式に出席する準備の気分へ。
フォーマルドレスに着替えて、髪型変えて、ストッキング脱いで、アクセサリー付け替えて、ダッシュで舞台裏へ戻る。

死神チームの台詞の間、次のシーン板付きの姉さんはそっと下手にスタンバイ。わたしは曲が鳴ってからスタンバイ。死神が暗闇を通る気配を感じながら・・・


天気のいい朝。
5年前のことももう忘れて、日常に戻って、わたしたちは生活してる。
美子が「三人で出ようよ」というから、三人でいとこの結婚式へ。5年振りにあの叔母さんと会うんだから、余裕を持って出掛けたかったのに、姉さんはのんびり準備してるし美子はばたばたしてるし、全く・・・
車だからって、道が混んでたらどうするのよ。
それでも三人揃って出掛けるのは久しぶりで、気恥ずかしいような、嬉しいような。
ふと視線を感じて振り返るけど、何もない。微かに青いなにか・・・気のせいか。
昔にもこんなことがあったような気がするが。
「何みてんの〜?」美子に言われて、時間がないことを思い出した。早く出なきゃ。
もういちど見るけど、やはりなにもない。「何でもないわ。さ、急ぎましょ」
胸騒ぎはするけれど、たぶん、気のせいね。
車回して来るわね。


・・・・・・




夜? ここ、どこ?
「また遅刻だね」ふいに声をかけられる。待ち合わせだったらしい。「待っててくれたの?」嬉しくて近くへ行く。会話の内容がどこかおかしい。彼はやさしい。わたしのことをよく理解していて、わたしがどう言えばどう答えるかも重々承知で。「そうやって、感情をおもてに出したほうがいい」「そんなこと、」「言われたくない、か?」この人の前では、素直でいられる。たあいないケンカ。「ちょっと!」そう言った瞬間、世界が止まる。静寂。「・・・なに?」
そこに知らない女の子がやってきて「お姉ちゃん、みーつけた!遊ぼ!」なんだかわからないまま引っ張って連れてかれる。彼を振り返っても黙って見ているだけ・・・

連れてかれた先は賑やかなところで、なぜか姉さんがいる。
後ろから視線を感じて振り返る。今度は気のせいじゃない。前みたいな寒い感じではない。見えないけど手を伸ばしてみようかと思うと姉さんに呼ばれて、会社の先輩、古橋さんに紹介される。
でもまた女の子(アンジェという名らしい)に引っ張り回されて・・・「姉さん、笑いごとじゃないわよ、私は子供が苦手なんだから!知ってるでしょ!」なんだかわからないうちにまた連れ出される。姉さん、何してたのかしら? それに、あれは、なに?


また、なにかおかしい気がする・・・なにかの気配が通り過ぎる。暗くてはっきりわからないけれど。


いつもより早く仕事を終えて家に帰ると、姉さんが居間で電話をしている。
「美子ももう短大ですから・・・」相手は叔母さんか。またか。もうほっといてほしい。
姉さんはわたしに気付かず、電話を終えてため息をついた。
普通に話するつもりだったけど、ついきつい口調になってしまう。姉さんは「もう、いいじゃない」と話を変える。美子は大学で音楽サークルに入って、毎日遅くまで練習してるらしい。なんであれ美子が元気でいてくれたらいい。
姉さんは言う、「もう大丈夫よ」。「何が?」「だから無理しなくてもね、美子の一人くらい・・・」
私は無理なんてしてない。わたしはやりたいようにやってるだけ、お願いだからそんなこと、言わないで。
ふざけてる振りしてはしゃいで、その場を終わらす。姉さんがご飯を用意しに行ってくれる。姉さんはほんと母親役を演じてくれてる。いろいろごめんね。ありがとう。
そんなことを思っているとまたあの気配。立ち上がって探すがわからない。
「そんなに強がる必要があるのですか?」
「・・・誰?」言いながら振り返ると、すぐに闇に包まれる。
一瞬だけ見えたその人は、とてもかなしげな、心配そうな顔してた。
照明入りでやった初めての時(場当たり)で、ここがどういうシーンなのか初めて理解した気がする。
ほんとに振り返った瞬間に暗転するので、彼の顔は一瞬しか見えない。一瞬だからこそ、目に焼き付く。


何かに導かれるようにまた夜のような場所。また「また遅刻だね」と声を掛けられる。また。
同じことの繰り返しなのか?これは夢なのか?
同じ夢かと思うと、話はこじれてどうやらこれは振られる場面らしい。
「変わったよね」「わたしが?」「頑張り過ぎじゃないかな」「でも頑張らなきゃ」「お姉さんもいるんだし、そんなに頑張る必要ないんじゃないかな」「何よそれ」
わたしが頑張る理由も理解してくれて、認めてくれてたじゃない。なんでそんなこというの?ついきつい口調になってしまった。
「やっぱり、俺達合わないよね。今日で最後にしよう。それを伝えたかっただけだから」

「変わったのはどっち?何よ、何なのよ!」
このあと「八つ当たり? らしくない」と返される台詞。
最初、もうここは振られきったと思って、最大の理解者であり支えだった彼を失う動揺で美貴のくせに確実に泣きそうになってそれこそ八つ当たりしてたんだけど、演出から「ここは癇癪を起こす感じです」といわれて、別れた男に癇癪を起こすってないよな、と思ってわかんなくなっちゃった。癇癪を起こすってのは、甘えられる相手にすることだから、たぶんだけど別れた相手には怒りはあっても、癇癪は起こさない。そんなことを美子と話してたら「まだここはケンカの途中なんじゃない?」といわれて、ちょっと気持が変わった。
かといってこのあと冷静になっちゃいけないのよね。状況がわからなくなって、どんどん追い込まれてくシーンだから、「論理的に、冷静に推理してるように見えたら負けです」と松井さんに言われたっけ。混乱しながら脳内で考えてることを口に出してるような感じにならないと。混乱の中で思いつくままに言葉を出すうちに気づく。
「そう・・・来てたのよ」5年前の両親の葬式の日に男がいたのを美貴が思い出してそういうと、男は視線を逸らす。「ああ、あなたは気づいていましたね」「普通気づくでしょ」何気ない台詞だけど、普通死神の気配には気づかないのだから、それを「普通気づくでしょ」と言ってのけた美貴と加賀美の繋がりを指し示す台詞なんだよね。


「だいたい何なの?」「全てに答えられるわけではないんですよ」「自分のことでしょ?」「ではあなたは、自分のことを全てわかっているのですか?」責められてるのはわたしの筈なのに、この人もなんだかつらそうな顔してるのはなぜ?

アンジェがまた現れて、美和姉さんと美子の話になる。なんだかわからないけど危ない気がする。
「美和さんが天使と言っていたじゃないですか」「あの人は違うから・・・」


連れて行かれたのは美子のライブ会場だった。美子がステージで、楽しそうに歌って踊る。
あの美子が。通路で不覚にもちょっと泣きそうになる。ステージが終わる。わたしは平静を装って、普段通りのポーズをして、見ている。アンジェが「美貴お姉ちゃんも来てるよ」と言い、美子と姉さんがこっちを見る。姉さん嬉しそうね(笑)美子は照れてか憎まれ口を叩く。
「大丈夫なんでしょ」「何が?」「やりたいこと見つかったって」「そうよ。夢を追いかけてるんだからいいじゃない」お父さんはこういう風に言うだろうな、と思う台詞を美貴は言う。

「あの人」にも「アンジェ」にも姉さんや美子に関わってほしくない。イヤな感じがする。
でもどうしても訊かなきゃいけないことがある。
「あの人は誰?」「あの人・・・」「アンジェは天使なの?」
なのに美子は新しい彼のことと勘違いして、アンジェと「あの人」のことを聞き出そうとする。
「よかったね」アンジェが言う。「なかったことにしたい感じ?」ぞっとした。


姉さんと美子ふたりの場面。
わたしのいない時間のことみたいなのに、なんでわたしが見ているんだろう?
夢なのかな?
まるでわたしが幽霊になって、ふたりからは見えないけどわたしは見ているって感じ。
こんな風に平穏な日常が続けばいいのに。わたしの話もしてる。ふたりともわたしには直接言わないけど、気にしてくれてるのよね。姉さんたらあんなに照れて、何だろ? あんな大きな声だす姉さん珍しいな。好きな人でもできたのかしら。美子が「三人でっていうのも寂しくなかったけど・・・もう大丈夫」と言う。嬉しいけど、すこし寂しいような気がしてる自分がいる。これがわたしの守りたかった日常。でももう何かがおかしい。父さん、母さん、助けて。


気づくと暗い。僅かな光の方に向かっていくと、美子が寝ている。手に剃刀を見つけて、苦しくなる。
美子は元気になった筈なのに。苦しい。「どうして・・・」思い出す、何度も見たこの光景を、・・・思い出してる? おかしい。これは今じゃない。もう終わったこと、もうずっと前のことだこれは。当時の絶対的な悲しみと共に、理不尽な仕打ちに対する怒りがこみ上げる。「・・・違う。・・・これは、何?」違うと分かっても、そこに美子が倒れているのをどうしようもないことに嗚咽が止まらない。
「お姉ちゃん」呼ばれて、見るとアンジェがいる。「やっぱりお姉ちゃんは違うね」わたしたちはどうなってるんだろう?



考えながらひとりで歩く。
途中であの人のことが浮かぶ。ひとりで座ってるのが見える。苦しいのは私たちのはずなのに、なんであの人まで苦しそうなんだろう?悲しそうなんだろう?
あの人に会えば、すべてがわかるだろう。そして会うことになるだろう。そんな気がする。


明かりの手前まで来た時、5年前のお葬式の日を思い出す。
姉さんに「大丈夫よ!」と言った5年前のわたし。大丈夫なんかじゃない。いつでもこうして強がって、彼とも別れて、姉さんも美子も守れなくて・・・父さん、母さん、と呼びかける。子供みたいに泣いてしまいたい。でも泣いてしまったら全てが終わる。美子が泣いてる声が聞こえる。すぐにでもいって抱きしめてあげたいけど、もうわたしはわたしの意志では動けない。父さん、母さん、どうか美子を助けて。父さんの気配を感じる。父さんはきっと近くにいるよね、それで美子を守ってくれるよね。もうわたしには何も出来ないかもしれない。わたしが泣き虫なのを父さんは知ってたね。

目の前が明るくなると、美子がこっちに歩いて来るのが見える。でもわたしも美子も、それぞれの道をまっすぐ歩かされてて、わたしは美子を見ることができない。美子もわたしを見られない。視界に入っているけど、自由に見ることも、声を掛けることもできない。美子、大丈夫なの? どこへいくの? 美子、もう泣いてないの? そう心の中で呼びかけながらすれ違う時、肩が触れた。美子、生きて。

あの人が立っている。目が合う。もう目を外すことができない。決まっていたことのようにステージに上がる。同じように、同じ空気を泳ぐように歩き、止まる。たぶんあの人の表情は、わたしの鏡だ、わたしはいまきっとこんな表情をしてる。そんな風に思う。たぶんわたしは・・・。この人はわたしを迎えに来たんだ。この人に訊きたいことがたくさんある。いつから見ていたの? どうして? いつまでこうしていられるの? どうしてそんな顔するの? 

「名前、聞いてなかった」
「聞いてどうします」
「聞きたいだけじゃダメなの?」


「・・・加賀美です」
「・・・加賀美?」
「・・・・他には?」
「他?」
「何が知りたいですか?」
「・・・もう知ったような気がするの」

この短いやりとりが好きだった。このシーンはすべて短い台詞で、多くは語らないんだけど、言葉を補っていつも、黙ってるところでも頭のなかでいろんなことを言っていた。
作者には黙って、台詞の順番を入れ替えてるところもあった。
「ずっと呼べるのかしら? それともすぐ忘れるの?」
本当は
「すぐ忘れるの? それともずっと呼べるのかしら?」
だったんだけど、すぐ忘れるの?って、簡単には訊けなくて。

「加賀美」と美貴が呼ぶのはこの一度限り。
誰かの名前を呼ぶのに、こんなに心を込めて呼ぶことってあっただろうか。二度と呼ぶことのない、名前。
そういえばこの芝居って、「姉さん」「美子」「父さん」「母さん」(父さん母さんは台詞じゃなくて勝手に呼んでたんだけど)って、ずいぶん名前を呼ぶ芝居だったなあ。

「全部知ってるの?」
「・・・いえ」
「そう」
「知っていて欲しかったですか?」
「い〜え」
「・・・見ていましたよ。全部ではありませんが」
「・・・そう」

最後の最後まで強がるのが、とっても美貴らしくて好きだった箇所。
両親を亡くしたあと、彼とも別れて、自分を見ていてくれる人がいないと思っていたこの5年を肯定される台詞。いつも答えが怖くて、面と向かって訊くことができなかった。
わたしの想像では加賀美が否定したのは、肯定したら心残りなくなってすぐ死んでしまうんじゃないかと思ってなのかなとも思った。「知っていてほしかったですか?」って完全に「い〜え」って言わせる為の振りだと思うが。よっぽど強がる美貴が好きなのか、美貴がかなしそうだったから本当のこと言っちゃったってことなのか・・・



「あなたと一緒に見ていたいと言ったら?」
「あなたの質問は答えにくいものばかりですね」
「見ていたいのよ」
「・・・また強がりですか?」
「ひと時の夢・・・どれだけ見て来たの?」

松井さんが唯一注文を出した台詞。
結構長いことこの台詞の繋がりがわからなくていた。
「(ずっと)見ていたい」と言ったことに対して「強がりですか?」と答えるのが、最初は「生きたいというのでなくて、この世界にいると選択することが」強がりなのかと思ったのだけど、最終的には「ずっと見ている」孤独を知ってるから、加賀美はこう言ったんだ、とわかって、だから「ひと時の夢・・・どれだけ見て来たの?」と訊くんだと。

本番に入ってからの数回は「あなたの質問は答えにくいものばかりですね」と言いながら加賀美さんは近づいてきたのだけど、かといってわたしはそこで合わせて寄ることはできないので、待ち受ける感じだった。少し距離が近づく。千秋楽は(千秋楽の記録に書いたけど)「あなたと一緒に見ていたいと言ったら?」と言ったら少し黙って、目を逸らして、困ったように笑って、目を戻して答えた。ひとことひとことの言い方で、立場が入れ替わるおもしろいシーンだった。あちらが困ってるのがわかったので、わたしは丁寧に伝わるように「見ていたいのよ」と告げた。松井さんが一番できてたと言う楽日の昼の「ひと時の夢・・・どれだけ見て来たの?」との違いはここなのかもしれない。難しいもんだ。


お互いの孤独がわかってて、死んでほしくない加賀美と、自分よりずっと長い間孤独を味わってきっとこれからもそれは続く加賀美の近くにたとえ短い時間でもいたいと望む美貴。美貴が生まれ変わることをやめて、永遠にここに留まれるならふたりの孤独は癒されるのかもしれないけど、美貴は留まることはできないし、加賀美も人間になって限りある生を生きることを選べない。わたしはいつかいなくなってしまうから、今しかない。いつまでかわからない、確実に終わりの来るこの時間を、大切に、大切に、できれば笑顔でいたい。かなしい顔をさせたくない。この人はわたしの鏡だから、わたしが笑えたら笑ってくれる筈だから。



「ひとつだけ、どうしても叶えて欲しいの」
「私には、あなたを連れて行くことしかできませんよ」
「最期を自分で選べるのね・・・でも私、自殺する気はないわ」
「知っています」
「そう・・・」

最初の頃、「感情をもっと出してもいいんでしょ?」と言ったあとの台詞なのにも関わらず、落ち着いて、確実に伝えることを選んでいた。だってどうしても叶えて欲しかったから。
でも、それでは加賀美に委ねきれてないことになるなって思って(デートシーンの「癇癪を起こす」の件と同様の理由で)、感情を出していいんだって言われて近づいて、行けるとこまで近づいて、お父さんに甘えるようでもあり、この人のかなしさを癒したいのでもあり、ほんとうは触れてしまいたいけど、触れられない。触れてしまったら、壊れてしまうから。誰にも言わずに来て、加賀美にだけ言えた美貴の本心なんだけど、「知っています」と答えられたことは美貴にとって救いだった。「わかりました」ではなく「知っています」であることが。


美貴は死にたい訳じゃないけど、生に対する執着がなかったから、死ぬことになったら死ぬことへのステップはそう重くなかった。でも守るべきものがあったから、死を選ばなかったし、生きて来れた。
守るべきものが強くなれた今、わたしはその役目を終えた。自分の思うように生きることができると思えて、だからこそ加賀美の提案を受け入れたんだと思う。

最後に笑って言う台詞。
「美子があなたに会いたがっていたけど」
「残念ですね、お会いすることはないようです」
「そう・・・・・よかった」
美子は助かるんだ、姉さんをひとり遺すんじゃないんだ。
ふたりは助かるんだ。そう思ったらほっとして、涙が止まらない。
「あなたはずっと生きて来たんですね」
これで安心して、美貴は加賀美に連れてってもらえる。



わたしは死んで、いまはわたしのお葬式。美子がまだ病院で、姉さんが憔悴しながら気丈に喪主を務めてる。二度目の喪主。

わたしはこのあと何が起こるかを知ってる。もう美子は目覚めるから。
病院からの電話を受けた姉さんが「よかった・・・」と言って泣いている。わたしは懐かしい場所に近づく。
わたしの迎えが来るのだから。
わたしは黒衣のウエディングドレスで、蝶の帯を引いて、穏やかな気持で歩く。
まだ泣き続ける姉さんの横を、そのまま行き過ぎることができなくて、振り返る。
姉さん・・・
呼びかけると姉さんが顔を上げる。
「美貴・・・」
ごめんね。
姉さんはまた泣いた。もうわたしの為には泣かなくていいのに。
美子をよろしくね。
勝手に決めてごめんね。でもわたしは全然、後悔してないから。

あの人が来た。姉さんが泣いてるのを見てる。
時間をくれてありがとう。でももういい。
「いきましょうか?」
そう言って手を差し伸べる。
あの時とは違う。もうそこまで行くことが決定されているから、迷いも恐れもなく、近くへ。
ありがとう。
ゆっくり手を取った。


手を取る直前で真っ暗になるので、手を取った時が美貴の終わりの瞬間かもしれないな。
闇の中へ誘われる。


カーテンコール、姉さんは最後に号泣してるから、いつも裏で涙拭いて復旧作業が大変そう。
わたしはもう晴れやかな気持になれてるからいいけど・・・(笑)

富山さん(アンジェ)が出て、叶ちゃん(美子)が出て、
酒井さん(鎮目さま)、海ちゃん(愛さん)、とき緒さん(美和姉さん)が出て、
土山さん(加賀美さん)とわたし(美貴)。

ありがとうございました。

わたしは邪魔にならないようにお引きずりの裾と帯抱えて、みんなで一列になって暗転の中、退場。
今回は最初から最後まで、暗転ハケ全部人任せで、誰かに手を引いてもらった。お世話になりました。

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mari_air at 00:00│Comments(0)TrackBack(0)演劇・舞台 

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