Air*Log

語り歌う女優、こもだまりの製作日誌(2005〜)。 演劇・語り・ライブ等の上演情報や、稽古や、思索。 昭和精吾事務所 二代目代表。脚本・演出家。麻邑楽×麻人楽。 ヒューマンアカデミー演技講師。

読書

岸田理生「火學お七」

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去年のリオフェスで上演した麻人楽音楽劇「七七火-なななぬか-」は、岸田理生の戯曲『火學お七』が原作だ。

再演時の台本しか出版されていないため、昭和精吾が出演したという初演「恋唄くづし 火学お七」の台本を探しに昭和さんの書斎へ行くも、それだけ見つからず(他の手書き台本はいくつか出てきた)、ユニットRの雛涼子さんに連絡したところ、雛さんは岸田理生研究をしているかたに貸していてないという。そしてお七役を演じた友貞京子さんと連絡を取ってくれて、友貞さん所蔵の台本のコピーを送っていただいたのだった。いろいろ書き込みのある、当時の空気を感じられる台本を!

本番も見に来てくださった。(雛さん=血系譜(原作「吸血鬼」)の毒子といい、友貞さん=お七といい、オリジナルの前で演じるのって超緊張しますね!(笑)

で、台本をせっかく掘り起こしたから、ちゃんと整備したいとおっしゃり、友貞さんと会って話すことにした。友貞さんも雛さんも、一度共演しただけのわたしにとてもよくしてくださる。
「こもださんが昭和さんから継いだものをつないでいこうとしているからよ」というようなことを仰るので、昭和さんのおかげだなとまた思う。

土曜に友貞さんと、初演台本をPCで活字化したものを原稿と照らし合わせる会をするために、初演台本を打ち込んだテキストデータを確認した。すると、「あれ?こここんな台詞だったっけ?」という箇所がいくつかあった。初演と再演を混ぜて構成しているので、上演した最終稿のことは覚えているけど、どっちがどうだったかとか詳しいことは忘れているのだ。
特にびっくりしたのは麻人楽「七七火」で♩般若の歌詞に使っているこの台詞部分。

あ、このシーンは本番の動画が見られるのでよかったらどうぞ!
(カメラのエアー音声なので少し曲の音質落ちてます)




初演台本
十六娘が一筋の 恋に狂うたおそろしさ
うつろまなこに 立ち上がり
行灯の火を傍の
障子にうつせばめらめらと
悪魔が笑う紅蓮の火 たちまち炎の海となる
猛火の中に狂うかと 思えばお七は泣きじゃくり
すでに狂うた眼の中に
見ゆるは吉三の笑い顔
因果の恋に身を焼いて
あわれお七は立ち尽す
紅蓮の中に立ち尽す


再演台本
十七娘が一筋の 恋に狂うたおそろしさ
・・・
猛火の中に狂うかと 思えばお七は泣きじゃくり



「じゅうしちむすめが」って歌った記憶があったので慌てて音源を確かめたらやっぱりそうで
これはやっちゃった(誤字)かと思ったけど、でも実際お七は17歳だから、敢えてそうしたんだっけな??って考えて自分を正当化したあとで再演台本を確かめたら「十七」でした。

ここは「八百屋お七」の有名なエピソードで、
好きな男ともう一度会うために放火したお七が捕まって、16歳は子供だから無罪、17歳は大人だから有罪になるが、お前は何歳だ、と訊かれるシーンです。
「八百屋お七」では17歳って正直に答えて火刑になるけど、「火學お七」は16歳って嘘をつき、生き延びて十年後、娼婦になったお七の物語です。

「吉三さんじゃないか?」と疑われる男達も設定がだいぶ変更されている。
初演は肉屋の主人、火事師(火消し)、学生だけど
再演は暦屋、土地係、質屋、鋏屋、米屋。しかもみんな妻がいる。
お七と別れてからの十年の生活を思わせる設定。

(ちなみに昭和さんは、肉屋の主人役だったらしい)


興味のある方は、読んでみてね。


捨子物語 岸田理生戯曲集I

告知)昭和精吾事務所の日替り占い『今日のラッキーアジテーション』

昭和精吾事務所の日替り占いを診断メーカーにて公開しました!

「アメリカよ」「長編叙事詩・李庚順」「邪宗門」「仮面劇・犬神」「日本自殺考」「人力飛行機の為の演説草案」「国家論」など、うちのレパートリーである寺山修司の言語が、診断結果として出てきます。ぜひお試しください。

【今日のラッキーアジテーション】※結果は日替り
http://shindanmaker.com/927883





16日に公開して、すでに200人ほどの方がご利用くださった模様。
われらが音楽統括、FOXPILL CULTの西邑卓哲氏も試してくれました。





日を跨いで台詞が繋がっているミラクル!

みなさまもぜひ、お試しください。

告知)昭和精吾の寄稿文再掲載「総特集 寺山修司<増補新版>」

【昭和精吾 寄稿文掲載】
河出書房新社 2019.6.24発売
「総特集 寺山修司<増補新版>」 1,404円(税込)256ページ

2003年刊行の冊子が増補新版として発売されることとなり、当時の昭和精吾の文章も再録されましたのでお知らせします。

全国書店にて販売中。
こちらでもお求めいただけます。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309979755/

9784309979755

羽野幸春先生のこと

2017年3月20日は、都立駒場高校時代の恩師・羽野幸春先生のお通夜でした。



青蛾館『中国の不思議な役人』本番2日目の深夜に、ご家族よりお知らせいただきました。
本番中唯一のマチネだけの日がお通夜で、本番中にもかかわらず列席できたのでした。
会場のウェルカムボードに先生の写真がたくさん飾られていたので、
列席できなかったみなさまにお見せしようと、そっと撮影してきました。
お会いした時はもう見事な白髪だった先生の若いころ。かわいらしいポーズ(笑)




羽野先生は担任でもなく、倫理の授業を受けただけです。
それでも、卒業してからも連絡を取っていた先生です。
訊けば「倫理」という科目がない学校も多いらしい。
最初の授業では、パスカルの『パンセ』の話をされました。
「人間は考える葦である」という一言は有名だと思いますが、先生はこの続きも教えてくれました。

人間は自然のうちで最も弱い一茎の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である。(略)
宇宙は空間によって私を包むが、私は思考によって宇宙を包むことができる。


発想の転換!たぶんその時わたしの口は「あ」の形に開いていたと思います。
掴みはばっちりというやつですね。それからわたしは倫理の授業が楽しみになったのです。


最も記憶に残っているのはギリシャ悲劇『オイディプス』の回です。
(詳しいことは割愛しますが)
父・オイディプス王が汚れとして追放され、弟のクレオンが王となる。
オイディプスの息子達は後継者争いをし、兄王子が敵国を率いて母国に攻め入り、兄と弟は相打ちで戦死。弟は国葬されたが、兄は逆賊として遺体を野に放置される。その処遇に対して、妹たち・アンティゴネーとイスメネ姉妹がどう行動したか…ということを話し、先生はアンケートを取りました。
「ここまでの物語を聞いて、クレオン・アンティゴネー・イスメネのうち最も誰に共感するか、理由もつけて書いてください。」
後日、廊下で会った羽野先生に「あなたのクラスで、クレオンに票を入れた女子生徒はあなただけでしたよ」と話しかけられました。わたしの中では断然クレオンだったので意外でした。次の授業で配られた集計表を見たらその通りで、いろんな考えの人がいるんだなあと知ったのでした。16歳の頃のお話です。

続きを読む

『ここにいたらいいのに』って思う人はもう"家族"なんだって

何年か前にTwitterでも言及したけど、演劇の本番が近づくと、やるべきことに追われて自由に話す時間が圧倒的に足りなくなって来る。稽古後にごはん食べに行っても、長くても終電の時間で解散なきゃいけない。
帰宅してひとりでいる夜中とか朝方に「あっ、そうか!」なんて発見しちゃってすぐ仲間に言いたくなって、でもこんな時間にメールしたら起こしちゃうかも…作業の邪魔になるかも…と翌日まで持ち越したりする。

そんな時期、あー、みんな近所に住んでればいいのになーってよく思う。

その時に思い出した言葉がこれ。

「おれ なにかの本で読んだことあるよ。『ここにいたらいいのに』って思う人はもう"家族"なんだって。つきあいの長さも深さも関係なく。」(「ちはやふる」末次由紀)


8巻のクリスマス会での机くんのセリフ。

ちなみに私は、まつげくんこと太一派です。

言えなかった言葉を夢の中でも探していた


わたしは高校生の時、長い手紙を書くようになった。
前にも日誌に書いたかもしれないが、同級生のあきちゃんと朝手紙を交換し、その場で読み合い、続きを話し、なんならそれでは飽き足らず帰りに駅まで一緒に歩いてホームでも話し、帰ってまた続きを手紙に書く……そんな時期があった。ひとりじゃない思考。交じる、混ざる。お互いの字を見すぎて、筆跡すら似てしまうくらい。
(LINEのない時代でよかった。きっと死んでしまう。)


手書きの手紙って、程度の差はあれ、だいたいラブレターだと思う。
文字ってその人がすごく現れる。PCもメールもこれだけ普及した今は手書きの文字を見たことない人もいるけど、筆跡は顔みたいで、以前はその人の筆跡をはっきり覚えていたものだ。

あきちゃんとも今は滅多に手書きの手紙の交換はしないけど、今年の頭、久しぶりに書きたくなって書き始めた。けど、久しぶり過ぎて(かつ長くなるので)、書き終わらなくて5月の引越しを迎えて、新居に着いてから続きを書いて、半年経ったところで書き上げて送った。画像はその手紙。そしたらあきちゃんの住所が変っていて、戻って来た(笑)。どれだけ手紙送ってなかったんだ。(「手紙送ったよ」→「えっ住所どこに送った?」ってやりとりがあったので、返送されてくるのは分かっていて、無事に新住所に送り直しました。)(そしてあきちゃんも返事を書き始めたが書き終わらないと言ってたから、うーん、来年までには届くかな?気長に待つことにする。)

手紙は、性質上タイムラグが生まれる。
マスターが「あんこ椿は恋の花、の歌詞の”三日遅れの便りを乗せて”って意味わかるか?船便だからだよ」と教えてくれた。そこまで悠長ではないけれど、郵便を使うのは急ぎの用事じゃない時だ。
たぶんそこに書かれるのは、少し未来まで変らないと思えることなのだ。
生きていたら思考は日々更新されるけれど、それでもいま不変だと思えるものを書き残す。
書き残す…手紙はいつも過去のあなたから来て、読むわたしはいつも一歩遅れる。それは遺書に似ている。読書もそう。だから読まれる手紙は、しあわせだ。続きを読む

SAI◎赤糸で縫いとじられた物語

誰かの荷物に紛れたらしく、帰ったら台本がない。覚えたとか大事とか以前に、台本、本番で必要だからなぁ(笑)

仕方がないので、昨日は寺山修司「赤糸で縫いとじられた物語」を読んだ。

これです。
宇野先生の絵が表紙。

「青ひげ公の城」にも、けむりという名の猫がいて、という歌詞があるし、駒鳥やアリスとテレスやダンボールの月だの消しゴムだの、寺山さんのアイコンがたくさん詰まってる本だった。

※5月公演で読まれた「大人になるまでかくれています」「かもめだけが見ていた、ある心中のかくれんぼ」のふたつも、この本の「かくれんぼの塔」にあります。


ひとはだれでも、実際に起こらなかったことを思い出にすることも、できるものなのです。

「書物の国のアリス」より
(寺山修司『赤糸で縫いとじられた物語』
収録)


ちなみに、台本は無事に帰ってきました。

曹操と安西先生



デスクトップの画像は、いくつかの画像の中からランダムに表示する設定にしている。
今朝はこのお方が。





曹操(王欣太『蒼天航路』)が、わたしに手を差し伸べている・・・!
贅沢すぎてにやにやしちゃう。
続きを読む

「もし世界の終わりが明日だとしても

「もし世界の終わりが明日だとしても 私は今日林檎の種子(たね)をまくだろう!」

寺山さんの戯曲の上演がラストシーンを迎え暗転すると、シーザー(現J・A・シィザー)の「1970年8月」が大音量でかかる。
真暗闇の中マッチを擦りながらの名乗りでよく使われる言葉なので、聞き覚えのあるかたも多いだろう。(たぶん6/9初日のA・P・B-Tokyoでも高野さんの声で聞けるんじゃないかな?)


てっきり寺山さんの言葉だと思っていたが、さすが名言蒐集家。
角川文庫『ポケットに名言を』(大和書房『青春の名言 心さびしい日のために』1968年の新版)の中で、ゲオルグ・ゲオルギウの言葉だと紹介していた。

それでさっきゲオルグさんて何者かしらと検索したら、なんと人違いだという記事を発見。続きを読む

「新しい時間」

誰を記憶するでもなく、誰に記憶されるでもなく、自分自身を記憶する光の情景。私たちが記憶と呼ぶもの、それは単なる記憶の記憶で、記憶の痕跡に過ぎない。記憶にラベルをつけて整理整頓し、お行儀良く過去から未来へ一直線に並べ直すことがもし記憶であるなら、世界は何と貧弱で頼りなく、暗く悲しいものだろう。忘却。記憶の本当の名前。光り輝く彼だけがこの世界を愛しつづける。

(横田創『Naked Cafe』20101224「新しい時間」より抜粋)



なんでだか文章の呼吸がやけにしっくりと来た。
気に入ったものは忘れないように貼りつけて。


記憶、という言葉を中学生の頃からずっと気にしてたとたったいま、思い当たった。

次&#9758;9/25 昭和精吾事務所BAR■ご依頼&#9758;showaseigo14@gmail.com■昭和精吾事務所代表。語り歌う女優。脚本・演出。寺山修司・岸田理生作品上演。実写妖怪モデル。麻人楽。ヒューマンアカデミー演技講師■客演&#9758;廻天百眼、SAI、青蛾館、田園に死す三沢篇■協力&#9758;FOXPILL CULT
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