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去年のリオフェスで上演した麻人楽音楽劇「七七火-なななぬか-」は、岸田理生の戯曲『火學お七』が原作だ。

再演時の台本しか出版されていないため、昭和精吾が出演したという初演「恋唄くづし 火学お七」の台本を探しに昭和さんの書斎へ行くも、それだけ見つからず(他の手書き台本はいくつか出てきた)、ユニットRの雛涼子さんに連絡したところ、雛さんは岸田理生研究をしているかたに貸していてないという。そしてお七役を演じた友貞京子さんと連絡を取ってくれて、友貞さん所蔵の台本のコピーを送っていただいたのだった。いろいろ書き込みのある、当時の空気を感じられる台本を!

本番も見に来てくださった。(雛さん=血系譜(原作「吸血鬼」)の毒子といい、友貞さん=お七といい、オリジナルの前で演じるのって超緊張しますね!(笑)

で、台本をせっかく掘り起こしたから、ちゃんと整備したいとおっしゃり、友貞さんと会って話すことにした。友貞さんも雛さんも、一度共演しただけのわたしにとてもよくしてくださる。
「こもださんが昭和さんから継いだものをつないでいこうとしているからよ」というようなことを仰るので、昭和さんのおかげだなとまた思う。

土曜に友貞さんと、初演台本をPCで活字化したものを原稿と照らし合わせる会をするために、初演台本を打ち込んだテキストデータを確認した。すると、「あれ?こここんな台詞だったっけ?」という箇所がいくつかあった。初演と再演を混ぜて構成しているので、上演した最終稿のことは覚えているけど、どっちがどうだったかとか詳しいことは忘れているのだ。
特にびっくりしたのは麻人楽「七七火」で♩般若の歌詞に使っているこの台詞部分。

あ、このシーンは本番の動画が見られるのでよかったらどうぞ!
(カメラのエアー音声なので少し曲の音質落ちてます)




初演台本
十六娘が一筋の 恋に狂うたおそろしさ
うつろまなこに 立ち上がり
行灯の火を傍の
障子にうつせばめらめらと
悪魔が笑う紅蓮の火 たちまち炎の海となる
猛火の中に狂うかと 思えばお七は泣きじゃくり
すでに狂うた眼の中に
見ゆるは吉三の笑い顔
因果の恋に身を焼いて
あわれお七は立ち尽す
紅蓮の中に立ち尽す


再演台本
十七娘が一筋の 恋に狂うたおそろしさ
・・・
猛火の中に狂うかと 思えばお七は泣きじゃくり



「じゅうしちむすめが」って歌った記憶があったので慌てて音源を確かめたらやっぱりそうで
これはやっちゃった(誤字)かと思ったけど、でも実際お七は17歳だから、敢えてそうしたんだっけな??って考えて自分を正当化したあとで再演台本を確かめたら「十七」でした。

ここは「八百屋お七」の有名なエピソードで、
好きな男ともう一度会うために放火したお七が捕まって、16歳は子供だから無罪、17歳は大人だから有罪になるが、お前は何歳だ、と訊かれるシーンです。
「八百屋お七」では17歳って正直に答えて火刑になるけど、「火學お七」は16歳って嘘をつき、生き延びて十年後、娼婦になったお七の物語です。

「吉三さんじゃないか?」と疑われる男達も設定がだいぶ変更されている。
初演は肉屋の主人、火事師(火消し)、学生だけど
再演は暦屋、土地係、質屋、鋏屋、米屋。しかもみんな妻がいる。
お七と別れてからの十年の生活を思わせる設定。

(ちなみに昭和さんは、肉屋の主人役だったらしい)


興味のある方は、読んでみてね。


捨子物語 岸田理生戯曲集I