
稽古初日。
このメンバー、4人の俳優と長野さんで三島の世界をお見せします。
光/吉雄役の平澤瑤さんだけが初対面でしたが、会ってみて納得。
池の下の前回公演である実加さんと平澤さんのふたり芝居「アガタ」はとても面白かった。
今日は本読みだけだったが、続けて音にしてみて、2作品を同時上演する意味があることがわかった。上演順は知らないが、ふたつの物語を続けて見ることで、もう一方の作品の解釈の助けにもなるというか、補完しあって、世界が広がると感じた。決して「これが正しい」と押し付けるのではなく、ああそうか、と、観客それぞれに気づきがあるような広がりかたを助けてくれそう。
そして、個人的には俳優に専念して物語に没頭できることにわくわくしている。
久しぶりな感覚。
方向が間違っていれば演出がちゃんとただしてくれる、共演者もちょっとやそっとでは困った顔しないだろう、と信じられる。
例えるなら、気にせず大声を出していいんだよ!と言われたみたいな感じ(笑)
誤解があるかもしれないから注釈しますが、
近年の作品の座組も演出家もちゃんと力があって、信用できる人たちです。
けど今回はちょっと特別。特別というのは技術の話ではなくて、相性とか感覚の話。
長野さんの作品を見て「ああそうだよね」とか「そこはそうするよ」と感じることがたくさんあった。
(先に書いた「アガタ」がまさにそうだったので、長い感想メールを送ったのを覚えている)
だから麻人楽をやるにあたって質問して、参考文献を教えて頂いたりもした。
実加りんとは、出会った頃から同じものを持っていたり、打ち合わせたみたいに同じ色の服を着てたり「前世からの因縁があるのかねえ」ってふざけて言うくらい奇妙なシンクロをすることがあった。
長野さんは、そういう符合を引き起こす人なのだと思う。
普段いない場所(しかも道を間違えたハプニングのせいでわたしはその時間そこにいた)でばったり長野さんに会ったこともある。
今日も長野さんの発言で、わたしと実加りんがついこないだ話したような内容が出てきた。
実加りんが「個人的に、いまがこの作品をやるのにベストタイミングだなと思う」と言ったように、わたしも個人的な理由で、なるほどいま「班女」が来たか、と感じていた。
初めて「班女」をやったのは8年前。あの時には知らなかった感情をこの数年に味わった。
平穏を装ってたけど振り返ればそこから数ヶ月は確実に精神の調子が普通じゃなかった、不覚にも骨折するくらいには(笑)。骨はくっついたけど、折れる前には戻らない。わたしも違うものになったでしょう。
自分が演出する場合は当然、演出の視点でいる時間は多い。
共同製作の感覚であれば、演出でなくてもそう。
俳優だけやればいい時でも当然バランスは取る。客観の視点や俯瞰で共演者を見ながら作る。普段の生活で空気を読むのと同じで、俳優も、その世界で生きるために空気を読む。
でも今回は「そんなに空気を読まなくていいよ」って、身を委ねていいんじゃないかって思っている。
作品自体、世間から隔絶された一室で起こる物語で、あの人たちに世間体とか関係ない。
結果は、2ヶ月ほど先の絵空箱で。
どうか、楽しみにしていてください。
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池の下 第25回公演「葵上/班女」
作:三島由紀夫(「近代能楽集」より)
演出/美術:長野和文
●日程:12月14日(木)〜17日(日)
14木 19:00
15金 19:00
16土 15:00/19:00
17日 15:00
●劇場:絵空箱(有楽町線「江戸川橋」駅 徒歩2分/東西線「神楽坂」駅 徒歩9分)

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