カホさんが屋形舟の日に貸してくれた恩田陸の『木曜組曲』を読んだ。
砂々良呑みの日に読書の話になって、カホさんが恩田陸がおもしろいよ、と言ったのに、私が一冊だけ読んだことある、上手だなと思ったと答えたら「それは私の中ではあんまりイケてないほうの作品なんだよね。今度貸すね」と約束してもらってたのだった。

いま大江さんの講演会記録の『「話して考える」と「書いて考える」』を読んでいるところで、これは勢いよく読む本じゃないからしばらく読み続けるのだけど、小説以外を長く読んでいると、反動えで物語を読みたくなってて、いいタイミングで来た。
夕食後に読み始めたらおもしろくて、一気読みしちゃってもう朝(笑)
簡単にあらすじを言えば、文筆業を生業とする女性5人が、4年前に死んだ、やはり作家である女性の死の真相を追求する、という話。同じ業界でありながら、5人のバラバラな特徴が明解に描かれていてイメージしやすく、それぞれがそれぞれの思惑で行動するのが5つの視点から描かれてて飽きない。こんなにはっきりした映像が浮かぶ小説も珍しいんじゃないかな。(『月の裏側』を読んだときは、文章の明解さが石持浅海の小説に似てると感じた。でもここまで映像が浮かんだことはない)


物語の舞台が狭い範囲にあることも、『月の裏側』と共通してる。密室というほどじゃないんだけど、もしかしたら閉塞された場所の緊張感がこの人の好む設定なのかな? その舞台設定の巧妙さもあって映像や演劇にしたらおもしろそう、と感じるのか(註/調べたら映画になってました)。でもたぶん、「文筆業の6人が登場人物の小説」だからこそおもしろいところもあるんだ。入れ子構造みたいで。小説の中で「フィクションとして書いても、作家が出てくれば必ず、読者は作者自身の姿を投影して読む」と、作家の1人が考えてる描写があり、実際わたしも読みながら「この作家達のなかの、どれが恩田陸に一番近いんだろう?」と考えながら読んでいることに気づかされる。そして、わたしは作家ではないけれど、自分はどの人物に近い思考回路を持っているかな、とも考えた。そのくらい、人物の輪郭が際立っていた。気づけば、今年の読書は珍しく女性の作品が続いてる。6月公演の脚本も女性で、それを数ヶ月かけて掘り下げたから(役者の仕事は、自分の身体だけでなく共演者やスタッフや観客まで巻き込んだ読書と言っても過言ではないと思っている)、女性の思考回路に興味が行ってるのかな。


おもしろかった! カホさんありがとう。
そしていま『蛇行する川のほとり』に取りかかったところ。
ちなみに挿画が(好きな絵本作家のひとりの)酒井駒子なので、この本が発売された頃、書店で見つけて手に取ったのを思い出した。


愛ちゃん文庫(私の、歳の離れた文通相手である愛さんがお友達の間で回し読みしている本をこう呼んでいる)の回し読み仲間に入れてもらって、お花見の時期に借りて来たのが、畠中恵の『しゃばけ』と恩田陸の『月の裏側』だった。遥か山口からやってきた本たち。
そういえば、『しゃばけ』もwing仲間で話題になって知ってた本だった。愛ちゃん文庫おそるべし!