鬼姫◎スナップ写真集5 片輪衆/目無・耳無・口無


【赤】目無役+【赤青共通】コロス役 八木岳さん。


『死ぬ機械』以来の共演。劇団アニマル王子所属で、和装で殺陣もやっているので今回は西脇さんのいない日は「殺陣師代行」として目を配ってくれた。目無は本番では目隠し、コロスも黒子面でどちらもハードルが高い設定ながらも、基礎レベルが高いのでこなした。本人は何も言わなかったけど相当怖いと思うよ、見えない殺陣って。特に、普段普通の殺陣やってる人からしたら、いろいろ歯がゆかったと思う。
向上心の固まりなので、血玉という新しいおもちゃを手に入れて「こもださんこもださん、ここってどういう風に出せばいいんですかね?」と楽しそうに血糊の相談に来てた。わたしも実は初演の『鬼姫』以降、他の出演者よりたくさん出しただけで自己流なのだけど、経験からアイデアを出すことはできるので「上に飛ばしたいから、鞘の手で持つのがいいかも」とか云えば「なるほど」と言ってすぐ練習する。出来そうだったからつい「行けるなら2つ。刺した時一発、斬った時にもう一発、かなあ」と言うと石井さんに「うーん、一発だけでいいんじゃない」と言われたにも関らず「いや、いけると思います」と、本番でも二発やり遂げたらしい。片輪衆の殺陣は本番は着替えと準備で見られなくて残念。

八木目無は時々下賎、戦うときは慇懃無礼な敬語になる設定だったらしく、紅葉登場の歌『罪』では「ありがてえ」て態なのに蘭に対しては「人間あがりさん、追いかけっこですかぁ?」と不敵に笑う。
本人のブログ(ヤギブロ)によれば、
目無=胸の傷は昔温羅にやられた傷、それ以来配下になり、自分の性能を上げるために自ら目を潰す/傷をつけることが愛情表現で自分も他人も殺人でしか愛情表現できない可哀想な人…になってしまった
という設定をしてたらしい。傷メイクもあるから準備には30分以上かけてて、でも早めに支度を始めるからいち早く準備ができているという出来た人です。

ソワレちゃんとは演技の組み立てに関する考え方が似ているそうで、ふたりはよく役についての検討をしていた。その場にわたしがいた時は、わたしも殺陣についてたくさんアドバイスをもらった。稽古初期に「気付くところあったらバンバン言って欲しい」と言ったから気にしてみててくれて、出過ぎた真似を嫌う人だから余程じゃなければ口を出さないスタンスだけど質問すれば「そこはこうがいいと思います」と即答、いつだってちゃんと答えを用意してくれてた。
本番間近のある日、ソワレちゃんと三人でごはんに言って、殺陣の記録映像を見せながら「どこで溜めを作るとか、ここからここは素早く流すとか、そういうリズムの回路がないからまったくどうしたらいいかわからない、ヒントを!アドバイスを!」と頼んで細かくわかりやすく教えてもらって、殺陣の時間感覚を理解した。

その時「初演でキセルを使った」と言ったら翌日個人所有のキセルを貸して下さり、ラストシーンでかっこいい赤い長キセルを持つことができた。

これですこれ!

仕込みの日にも役作りタイプの分類の話とかして楽しかったし、みんなの素敵なお兄さんです(年下だけど)。本来はお兄ちゃんキャラじゃないのだろうけど、場に合わせてその立場にすっと立つことのできる人。

【赤青共通】耳無役+コロス 桐山菜穂ちゃん。
 

劇団東京都鈴木区所属の、コメディエンヌ。『存ぜぬ快楽』以来の再会。
かっこいい台詞言っててもおもしろくなっちゃう、すごい人。
イケメンイケメンと若い女子のお客様から大人気だったけど、歴とした美人女子です。

素顔はちょっとおとぼけ風なのがまたすてき。
口無の橋じゅんとは初共演ながら、ずっと一緒にいる役なのですっかり仲良くなってました。
「本番1週間前になったらやめていい」と西脇さんから言われてたトレーニングを劇場でもふたりでやってたのを私は知っています(もはや筋トレクラブだった)。素振りもよくしてたよね。
たぶん今彼女らの二の腕の筋肉すごいことになってる。


耳無が温羅の話を聞いて(聞こえないから聞いてるフリして)真面目な顔で頷いてこっそり「なんだって?」って訊く演技がすばらしかった。
耳無の素早さを表現して!ってリクエストにも応えて「行け!片輪衆!」のあとびゅって飛び出していくのもかっこよかったし、ただのイケメンじゃない、サービス精神満載のイケメンでした。

わたしの前髪は菜穂ちゃんのケープをお借りしてました。
しかしメイクさんとこで別のなにかで固めてもらった髪を「ちょっと見てー!超固まってんだけど!」とみんなに触らせてまわり、私を羨ましがらせたお茶目な菜穂ちゃんでした。


【赤青共通】口無役+コロス はしじゅんこと 橋本じゅんちゃん。
 

ある日突然、口無は開花した。石井さんが「これ超笑顔でやってみて」と演出をつけて爆笑を取った途端、はしじゅんは片輪界のアイドルになったのだった。
何度見ても片輪衆のテーマソング『片輪の戦士』はおもしろかった。
赤鬼では完全なる振付け、稽古場でみんなが我先にと覚えて本番でもお客さんが参加してくれたんだってね。中でも口無のソロはまた特殊で、赤鬼でだけ髪の毛も巻いて踊りまくってたねえ。
稽古初期にわたしが軽い気持で言った「ここはみんなでLやって」をここまで、お客様と温羅まで巻き込むおおごとに発展させてくれました。目論みとしては二階席から毎回見る(愛を受け取る)つもりだったけど、準備の都合で袖からこっそりしか見られなかった。でもカーテンコールでしっかり客席に入り込んでみんなの『L』=愛を受け取りました(『少女椿』に引き続き、すいません)。紅葉はしあわせものです。
写真はツーショットと、ツーショット撮ってるところを見無が撮ってくれたもの(笑)
完全に同時だ。

はしじゅんは『少女椿』で鬼姫ゾーン出演者だったので千年前の紅葉と殺陣をしている。
まさか今回こういう関係になるとはね、なんか不思議。『罪』のハンドマイクを受け取ってくれるのも口無、片輪衆が終わってわたしにHSマイクをくれるのも口無、マイク仲間でもありました。


おまけに、千秋楽前の、赤鬼最後の殺陣の手合わせの写真をつけておきます。
片輪衆ほんとにかっこよかった!ありがとう!




【青】目無役 おにいこと倉垣吉宏さん。


おにいでかい!でかい!とこの稽古に入ってから何度言われたことか。スタジオでは蛍光灯に素で届くもんだから「脚立イラズ」の二つ名まで授かったよね。

でかいのに低姿勢な青目無。初期の「ここかなここかなぁ?」と言いながら斬りにいくのも、後期の「もらったァ!」とか「お命頂戴!」「討ち取ったりィ!」みたいなのもよかったなあ。
ベタな台詞でもあそこまで潔くやられるとキマるんだねえ。そこがおにいのおにいらしさ。
「なにィ?」が似合う屈指の俳優だと思う。

役の上では、紅葉登場の歌『罪』で、誰よりも強く長く握り返すのが青目無のおにいだった。
見えてないから他の人がどのくらいの握手なのかを知らなかったせいもあるだろうけど、きっと紅葉への情があの握力に現れてたのでしょう。熱い男。

青片輪衆の『片輪の戦士』はエアーバンド。
クールなベースの耳無、リーダーでボーカル兼サブギターの口無、そして激しいリードギターの目無(見えないくせにまあ暴れるよね)。おにいの一人っ子パワー炸裂で、おもしろいバランスだった。

おにいとの絡みは(もう一役の秀衡含め)ほとんどなかったけど、稽古の外では随分話しさせてもらった。帰り道が一緒のTETRA。とおにいとは電車の中でも延々作戦会議。この三人、ほぼ絡みないのに(笑)。いや、絡まないからこそいい具合に話せたのかも。いつもこの二人と話すと、稽古で漠然としてるなにかが頭の中で整理された。
阿佐ヶ谷に行ってからはマームー含めて4人は毎日一緒に飲んでは語り合った。外からの話を聞けるあれは貴重な時間だった。とってもとってもありがとう!

このあと共演も決っているし、楽しみ。