紅葉:はやく私を、殺しておくれ。(撮影:藤居幸一さん)



昭和さんチラシが出来上がって、百眼のパスとUMのパスをもらったので記念写真。
リハの時間がたくさん取れて、サブステなのに照明さんのご好意でちょっとした暗転も手伝ってくれて、万全の態勢だ。

社長と大島さんがステージ上、わたしがステージの下から始める趣向。
見知った顔が最前列に満面の笑みで陣取っている。渋谷の舞台のあとダッシュで駆けつけると聞いていたお客様も間に合ったようだ。

開演前の静かな演奏の中、わたしのMC。
「本日は、アム10周年にお越しいたどきありがとうございます。ふじみやたくとこもだまり、と、本日はゲストにおおしまともえさんをお迎えしました。たくとまり初の女性ゲストです。そうなんですよ大島さん!
これから朗読する『鬼姫』は、このあとメインステージにも登場する廻天百眼というチームの作品で、その初演の音楽を担当していた藤宮さんと出会った作品です。そのヒロインである蘭を演じていた大島さんとの出会いの作品でもあります。数年後、なっちこと金原沙亜弥さん主演で上演したので、ご存知のかたもいらっしゃると思います。蘭が戦いを挑む吸血鬼の王・紅葉という役をわたしが初演再演とも演じました。そして別の作品『少女椿』で、千年前に紅葉が戦いを挑んだ先代の王がサホという名前だったということを知ったのですが…」

2014.11.02 たくとまりvol.8
ふじみやたくとこもだまりとおおしまともえの鬼姫
「鬼姫 - 約束の血」 
構成:こもだまり 即興サントラ:ふじみやたく

[出演]
蘭・サホ:大島朋恵
紅葉  :こもだまり
鬼の楽士:藤宮拓


[特別出演]
あぐり:紅日毬子
睡蓮:仲村弥生
[TEXT]
石井飛鳥「鬼姫」「少女椿」(虚飾集団廻天百眼 戯曲)
ゆきや「君を待ち望む」「千年前の物語」「共に生けぬ因果は運命」(pixiv)


 
(撮影:石井飛鳥さん)


音楽が止む。
サホが「♪かごめ かごめ」を静かにうたう。呼ばれたような気がして顔を上げる、まだ生まれたばかりの紅葉。鬼さんこちら、手のなるほうへ。かごめを辿って彷徨って、たどり着いた場所で見えるのは、サホの背中。

あぐり「サホ姫様ー!人間上がりが、うまれましたー!」
サホ「♪うしろの正面だあれ?」
あぐり「名は、紅葉でございます。」
睡蓮「めでたや!」


こんなオープニングでした。
『鬼姫』で描かれた吸血鬼一族の王・紅葉と、吸血鬼になりたての蘭との戦い。
『少女椿』の中で描かれた『鬼姫エピソード零』(正式名じゃあなくて、わたしが勝手にそう呼んでいる)の中の、千年前の世界=紅葉の先代の王・サホと、吸血鬼になりたての紅葉との戦い。
その別々の戯曲に描かれた「サホー紅葉ー蘭」という系譜を一つにしてみたい、サホとサホの生まれ変わりである蘭、その両方を大島さんに演じてもらうというのが狙い。
でも何より、大島さんの蘭ともう一度会えるのなら会いたい、という私のわがままが一番の理由。
(一応言うけど、もちろんなっちの蘭も愛してる。生き別れた娘や恋人を思うみたいなもので、比べようがないことなのです。)
2009「鬼姫」初演、2011「少女椿」初演、2012「鬼姫」再演、2012「少女椿」再演の4つの時代があって、紅葉→零紅葉→紅葉→零紅葉と、ぐるぐる回っている。輪廻のお話である「鬼姫」を体感するような巡り合わせだった。当時のレポートでも書いたが「鬼姫」再演がWキャストだったから、ひとつの役名を何人もが演じるのを見てきた。例えば木蓮は宮田真奈人くん、ざっくん、TETRA。の三人。蜜は牛水里美さん、毬子、ソワレちゃんの三人。同じ人物で同じ魂であるのに、少しずつ違うその人物を見るのは、すこしだけ前回と違う今世だと感じた。ちなみに弥生ちゃん演じる睡蓮と、常川さん演じる温羅は、何度生まれ変わっても変らず同じ姿でいてくれて嬉しかったな。

その膨大な言葉から、我ながら妄想でよく構築したと思う。
大半は、石井さんの脚本の台詞。
紅葉の台詞でないものを私がしゃべって進行させてたり、蘭と蜜の会話を蘭と紅葉の会話にしたりという敢えての錯誤もありつつ、紅葉はずっと見ていたから成立していると思う。
そしてラストは、ゆきやさん(百眼の二次創作小説をたくさんwebで書いてくれてるかた)の鬼姫小説に影響されて作った、語り部分。公演後に書かれたそれら作品群を読んで、わたしが泣くんだからたいした出来映えだと思うの。で、何度読んでもいいなーと思えるから、今回この企画を思いついたときにそれ使いたいと思った。最初はそのまま読ませてもらうつもりだったけど、構成段階で書き替えたりしていくうちに、紅葉がしゃべり出した言葉を書き留めた、それもまるっと使ったので、最後はどこからどこまでがどっちの言葉だかわからなくなっちゃった。
快く使用許可をくださったゆきやさん、ありがとうございました。
そして終演後に泣いたあとの顔でうれしい感想をくれた百眼っこもありがとう。
その時に「本番は蘭の気持を追ってみてるから、今日紅葉様の気持がわかって、なんか…」と言われて初めてそこに気付いた。わたしは逆に紅葉の気持しか追ってないから、今日の台詞もなんの驚きもないのだけど、蘭を追っているお客様にとっては新鮮だったんだな。やってよかったなと思えた。
ゆきやさんの書いてくれた蘭の言葉やサホの言葉をわたしがそうやって受け取った。
なんていうか、あり得ることで言うと 文豪のラブレターを死後に読む、みたいな感じよね。

はいお写真!

まずは特別ゲスト。
昨日のSAI稽古場で、「(あ、明日弥生ちゃんおる…)ねえ、明日鬼姫見る?」「みるよー」「めでたやって言う?」「いいよー」「じゃあ毬子さんにも頼もうか…」
急な思い付きでのお願いだったのに快諾、客席から声を飛ばしてくれたあぐりと睡蓮。
わざとじゃないんだけど、事前報告してなかったのでその時客席で写真を撮ってくれてた石井さんもお客様と同じ状況だったわけで、あとで「あれはびびった。」と言われて、あっ、てなった。
同じく社長にも言ってなくて、「声を聞いて泣きそうになりました」と…
ふたりがこれだけ反応するなら、お客様も楽しんでいただけたかと思う。


あぐり・紅日毬子さん。ちゃんとあぐりメイク、ありがとう。


睡蓮・仲村弥生ちゃん。安定の懐かしい「めでたや!」、ありがとう。


台本はこんな感じ。


蘭・大島朋恵さん。写真撮るとき社長が行方不明で、社長のギターとの3ショット。
あいしている!


楽士・藤宮拓さん。たくまり名物社長の頭飾り、今回は赤い角つけて社長も鬼の仲間入り!


三人で紅黒鬼姫!大島さんと着物がお揃いみたい(笑)


最後にもう一枚。

(撮影:石井飛鳥さん)

写真をみたらどの台詞言ってるところかわかる。たぶん大島さんもわかる。
「鬼姫」のなかでもっとも特別な箇所。紅葉が黙る実際はほんの短い間。
わたしはこの瞬間がとてもいとおしい。
石井さん、切り取って残してくれてありがとう。

千年前のお前、千年後の私、殺し合い別れることで出会い直す約束の血。
きっとまた会える。